はじめに
「うちの子の血液型、本当にA型なの?」
子どもが生まれると、母子手帳や出生届けの準備でバタバタする中、「この子の血液型ってなんだろう?」とふと気になることはありませんか?
「母親がA型、父親がB型、なのに子どもがO型って、これ合ってるの?」
「赤ちゃんのときO型って言われたけど、成長してB型になったってどういうこと?」
——そんな声も少なくありません。
実は、血液型は「一生変わらない」と思われがちですが、医学的に見ると「変わったように見える」「後から確定する」といったことが実際に起こりうるのです。
- なぜ血液型が変わることがあるのか
- 血液型の変化が与える医療的影響
- 親として、血液型をどう扱うべきか
についてわかりやすく解説していきます。
医療機関での再検査を悩んでいる親御さんの「モヤモヤ」も、きっとこの記事で晴れるはずです。
血液型が「変わる」と言われる3つの理由
赤ちゃんの血液型は“まだ未完成”であることがある
実は、赤ちゃんの血液型は、生まれた直後は「正確には判定しにくい」ことがあります。
なぜかというと、血液型を決める要素である「抗原」や「抗体」が、生後すぐはまだはっきりと表れないからです。
特にA型やB型の抗原は、赤ちゃんの体内で十分に発現するまでに時間がかかることがあります。
そのため、生まれたときにO型と診断された子が、成長とともにA型やB型と判定されるケースも珍しくありません。
これは「血液型が変わった」というよりも、「最初の診断がまだ不完全だった」と理解するのが正確です。
時期 | 抗原の発現 | 抗体の発現 | 判定のしやすさ |
---|---|---|---|
生後すぐ | 不完全 | ほぼなし | ❌ 不正確な可能性あり |
生後3〜6ヶ月 | 発現し始める | 抗体が形成される | △ やや正確になる |
1歳頃〜 | 安定する | 抗体も明確に | ✅ 正確な判定が可能に |
血液型:O型(生後すぐ)
↓ 成長とともに抗原出現
血液型:A型(1歳以降)
【見た目には「変わった」ように見えるが、実際は“正しく判定できるようになった”だけ】
病気や骨髄移植などで血液型が本当に変わるケースもある
血液型が“本当に”変わるのは、極めてまれですが、ゼロではありません。
たとえば、白血病の治療として骨髄移植を受けた場合、ドナー(提供者)の血液型に変わることがあります。
これは、骨髄にある造血幹細胞が新しいものに置き換わることで、赤血球をつくる元が変わってしまうからです。
また、他にも特定の自己免疫疾患や再生不良性貧血などの重い病気でも、赤血球に異常が出て血液型に影響を及ぼすことがあります。
ただし、これらはごく特殊なケースであり、ほとんどの子どもには当てはまりません。
まれに2つの血液型を持つ「キメラ型」も存在する
さらに稀な例として、一人の体の中に異なる血液型が存在する「キメラ型」の人もいます。
これは、胎児の時期に双子のうちの一方の血液細胞がもう一方に入り込み、混在することで起こります。
実際にNHKのニュース(2024年4月)では、ある女性が長年O型として生きていたのに、妊娠を機にA型と判定され、「二重の血液型」を持っていたことが判明しました。
このようなケースは非常に珍しいですが、血液型が「絶対ではない」ことを物語る一例です。
原因 | 説明 | 実際の例 |
---|---|---|
骨髄移植 | 造血幹細胞が入れ替わる | 白血病治療後など |
キメラ型 | 双子の細胞が混在 | ごくまれ |
自己免疫疾患 | 赤血球に異常が出ることがある | 稀だが報告あり |
血液型が変わることの医療的影響と日常生活への関わり
医療現場では血液型の“正確さ”が求められる
血液型は、特に医療現場では非常に重要な情報です。
輸血や手術、臓器移植の際に血液型が一致していないと、命に関わる拒絶反応が起きることがあります。
そのため、医療機関では何度も血液型を確認したり、緊急時でも“慎重に輸血”を行ったりしています。
つまり「正確な検査は、医療機関が必要なときに行う」というスタンスです。
親が心配して検査を受けに行く必要は、日常的にはそれほど高くないと言えます。
妊娠・出産時のRh型の影響は要注意
血液型にはABO型だけでなく、「Rh型」もあります。
特に母親がRh(−)で、赤ちゃんがRh(+)の場合、2人の血液が混ざることで免疫反応が起こることがあり、次の妊娠に影響する可能性も。
そのため、妊婦健診ではRh型を必ずチェックします。
ここで医師から再検査を勧められる場合は、必ず従いましょう。
ただし、ABO型の違いによって母子間で何か問題が起こるということは、一般的にはありません。
性格診断や相性占いは“おまけ”と考えて
「A型は几帳面」「B型はマイペース」など、日本では血液型と性格の関係を信じる文化があります。子どもの将来や友達関係を気にして、早いうちに血液型を知っておきたいという親もいるかもしれません。
でも、これはあくまで“占い”の域を出ません。
もし血液型が後から変わったら、その性格診断はどうなるのでしょうか?
結局、子どもの性格や資質は、血液型ではなく、その子自身の個性と育ちの中で育まれていくものです。
親が知っておきたい“本当のところ”と安心のポイント
「うちの子の血液型、知らなくても問題ないですか?」
結論から言えば、「問題ありません」。
ほとんどの病院では、日常的な診療の中で血液型を確認する必要はないため、乳児健診などでも血液型検査は行われていません。
逆に「知っておきたいから」という理由だけで、医療機関に行って検査を希望する親もいますが、それに対して医師が「今は必要ありません」と説明することもよくあります。
血液型の検査は、注射(採血)が必要になるため、痛みやストレスのある行為です。とくに赤ちゃんにとっては、負担になることもあります。
成長とともに自然に知る機会が訪れますので、「いつかわかるから大丈夫」と安心して見守ることができます。
「じゃあ、いつ血液型が必要になるの?」
血液型が必要になるのは、以下のような場面です:
- 手術やけがで輸血が必要になったとき
- 妊娠・出産の際(特にRh型)
- 医療機関での入院前検査
- 特殊な病気の疑いがあるとき
つまり、医療的に「必要になったときに検査すればよい」のです。
日常生活では、血液型を知らなくてもまったく困ることはありません。
🟢 図4:血液型検査が本当に必要になるタイミング
✅ 本当に必要なのはこんなとき
- 🏥 手術や輸血
- 🤰 妊娠中(Rh型チェック)
- 🛌 入院・特殊治療時
❌ 日常生活では… → ほとんどの場合「知らなくても困らない」
親として「焦らず、見守る姿勢」でOKです
「知らないと不安」と思う気持ちは、とてもよくわかります。
でも、血液型は性格や将来を決めるものではありませんし、変わる可能性があるからこそ「早く知ろうとしすぎない」のも一つの選択肢です。
医療が必要と判断したときに、正確な方法で検査を行ってくれる——その信頼があるなら、焦らずに子どもの成長を見守ることが、親にとって一番大切な役割です。
まとめ:血液型に振り回されない、賢い親でいよう
- 血液型は生まれた直後には正確に判定できないことがある
- ごく稀に、病気や骨髄移植で“本当に変わる”こともある
- 医療的には、必要なときに正確な検査をすればよい
- 性格診断や占いよりも、子ども本人の個性を見てあげることが大切
血液型は、確かに人間の「特徴」の一つではあります。でも、それに振り回されすぎる必要はありません。大切なのは、「この子がこの子らしく育つこと」です。
だからこそ、血液型のことで不安になったときは、この記事のことを思い出して、深呼吸してみてくださいね。